本記事について

この記事は、2024年5月22日に弊社の森数美保がVoicyでお話した#113 キャリアアップよりキャリアフィット。強み×場所で結果を出せる場所へ(ゲスト:石倉さん)を元に作成した記事です。公益財団法人 山田進太郎D&I財団COOであり「Alternative Work Lab」所長でもある石倉秀明さんとキャリアの相対性、キャリアフィットについて意見交換しています。

これまでのチャプターでは、”強みの見つけ方””強みを発揮する場所の探し方”をご紹介してきました。最終チャプターでは、キャリアをテーマにした最先端の研究内容を交えつつ、キャリアフィットへの理解を深めていきます。

プロフィール

希望と適性。キャリアにとってベストな選択はどっち?

森数

キャリアについての面白い研究があるとのことですが、是非教えください。

石倉

経済学でマッチング理論(※)というものがあり、最先端の研究をしている東大の教授とお話する機会がありました。

(※)マッチング理論:例えば、保育園と保育園に入りたい人の願いが最大の形で叶うようにするというアルゴリズムを作り上げる経済学の理論。

自分の希望と違う部署や職種に配属される”配属ガチャ”という言葉がありますよね。配属ガチャが起こらないように、新卒の配属希望と会社側の要望を最適にマッチングするアルゴリズムを作り、配属を決める実験をある会社としているとのことでした。

実験の結果、新卒社員の入社後や配属後の満足度が上がり、離職率が減りました。けれども、新卒本人の希望が叶うことで満足度は上がるかもしれませんが、本人の職種への適性(向き不向き)や配属がベストかどうかは別問題です。そのため、僕は教授にこう質問を投げかけました。「希望と適性、どちらを選択することが将来のキャリアとしてベストかは研究を通じてわかっているんですか?」と。教授の回答は「どちらがキャリアとして良いのかはまだわかっていない」とのことでした。

森数

希望の仕事に就けているキャリアが良いのか、本人の適性をベースにしたキャリアが良いのか、まだわかっていないということですか?

石倉

ですね。マッチングをしようと思えばできるけれども、本人の希望通りに配属されるケースと、希望通りじゃないけれども適性が高い仕事に配属されるケースのどちらが良い結果になるかはわかっていないようです。

<キャリアとして良い結果の一例>
どちらが将来的に収入が高くなるのか
どちらが将来的にキャリアとして満足度が高くなるか
どちらが希望職に就ける率が上がる

新卒者の希望よりも、適性を見て輝ける場所に配属した方がファーストキャリアとして良い、という”人事的な最適な配置論”もあります。希望と適性どちらを優先することが将来的に良い結果になるのかはわかっていない、発展途上で非常に面白いテーマだと思います。

強みは場所によって変わり、ベストな場所は常に変化する

石倉

新卒の時は別ですが、人は生活していくと今の自分にとってベストな場所は変わっていきます。キャリアにはアップもダウンもなく、その時々でフィットする条件が違うので、常に探し続けていくことになるんだとは思います。

森数

私はこれまでキャリアコンサルタントの仕事をしていました。その中で、若い人ほど「希望の仕事ができない」「職種に就けない」という理由でキャリアを選び直したり、辞めようとする人に多く、年次が上がるほど、「価値発揮をもっとできるところに行きたい」という志向性を持つ人が増えていきました。年齢による志向性の変化はとても興味深いと思います。

石倉

わかります。40代になって「希望の仕事がしたい」という人は少ないように感じます。

森数

そうですね。やはり価値発揮や社会貢献をしたい人が増えてくる印象です。最終的には誰かの役に立ちたいという思いが強くなるみたいですね。

石倉

そうですね。ただ、価値発揮しながら社会貢献をするためにも、自分の強みや活かし方を知っていた方が良いと思います。僕は3、4社ほどの色々なステージの会社を経験したことによって、どういった場所で自分が活きるかは理解できました。

例えば、僕は割とロジカルなタイプですが、過去働いていたDeNAにはよりロジカルな人がたくさんいました。そのため、DeNAで僕はロジカル系ではなくガッツ系でした。やはり、自分がどういうタイプかということは相対します。場所によって強みは変わることを皆さんに知っていただけるといいなと思います。

どこにでも通用する人はいません。今ユアパトにソフトバンクの孫正義さんが転職しても困りますよね。何を任せていいかわからないですから。

森数

たしかに。優秀ならどこでも活躍できるとは限らないですね。

石倉

逆に、どこに行っても駄目という人もいません。ほとんどの人は環境要因によって変わります。環境(場所、上司など)と自分の特性・強みを掛け合わせて決まるのだと思います。是非、周りを観察して自分のスキルを俯瞰し、どこでなら自分のスキルが輝くかという視点を持つと良いと思います。

森数

弊社で提供しているキャリア戦略講座で設けているゴールの1つに、”自分は何者なのか”や”何者であるかを言える状態をつくる”というものがあります。自分が何者かを言葉にできる人はかなり少ないのですが、石倉さんが言ったように、自分が何者なのかを客観的に見る視点を養えば、能力を活かせる場所も見つかりやすくなりそうですね。

石倉

そうだと思います。そういう視点でエージェントを活用したり、森数さんのCAREER PATRONUMみたいなキャリアパートナーに相談することも有効かもしれません。やはり、プロがすごいところは、どういう人がどの会社に当てはまりやすいという情報や感覚を持っているところです。

森数

そうですね。ちなみに、石倉さんの新書『CAREER FIT 仕事のモヤモヤが晴れる適職の思考法』はもう発売されましたか?

石倉

はい、もう書店に並んでいます。今日お話ししたような、キャリアへのモヤモヤがすっきり晴れる方程式や思考法をご紹介しています。是非皆さん読んでみてください。

まとめ

新卒者の希望通りに配属するのか、人の適性を見て配属するのか、というテーマがとても興味深かったと思います。配属への希望はあくまで本人の思考です。新卒の時は、まずやってみないと自分が本当に希望してることなのかもわかりません。何年もキャリアを積み重ねていったとて、自分がやりたいことが価値発揮できるものなのかもわかりません。

自己責任感が強い方ほど、希望通りの配属をされてうまくいかなかった時に「自分の能力が足りない」とか「自分の得意なことがないんじゃないかな…」と自分を責めます。けれども、決してそんなことはありません。色々な要因が合わさってパフォーマンスに影響が出ます。ですから、一つずつこれまでの自分について整理してみるといいかもしれませんね。